「チ。ー地球の運動についてー」の放送が始まります。


NHK総合テレビにて10月5日(土)23:45から総合テレビにて
アニメ「チ。―地球の運動についてー」の放送が始まります。
番組公式サイトはこちら https://anime-chi.jp/

この原作の漫画は2年前に完結したんですけど、私、読んでいるのですよ。
まぁ、私、先月は大阪で、今月は東京でホロスコープ講座を行うのですけどね、西洋占星術を勉強しようという人は、“参考に”観ておいてもいいかなと思っているのですよ。
この「チ。―地球の運動についてー」の内容は、フィクションではありますが、15世紀のヨーロッパで、キリスト教が天動説を是とする時代に、地動説に出会い、それを守ろうとした人々の奮闘を描いたものであります。
地動説なんて研究しようとしたら、異端とされ、火あぶりになったのであります。
コペルニクスが「天球の回転について」を書いたのが、1543年。つまり16世紀。その百年くらい前の話ということになります。
ちなみにガリレオ・ガリレイが宗教裁判で、地動説を捨てることを誓わされながらも“それでも地球は回っている”と語ったのは、1633年とされています。まだまだ長くキリスト教が地動説を締め付けていたのであります。

で、実は西洋占星術も、中世の時代には大いにキリスト教に迫害をされていたのでありますよ。
簡単に西洋占星術の歴史を語りますと、古代メソポタミアやエジプトで星占いの原型、基礎のようなものができて、それが古代ギリシアに伝わり、形ができていきました。その後、古代ローマに伝わるのですが、キリスト教が誕生すると、占星術は否定されるようになるのです。占いには宿命というものがあって、その宿命に人間が左右されるというのは、キリスト教の自由意志で生きるべき人間の姿勢に反するという見られ方をしたのですよ。
で、ヨーロッパでは、西洋占星術は衰退していきました。
その後の数百年間、どこで西洋占星術は命脈を保ち、技術が発展したというと、実はイスラム圏なのですよ。

で、12世紀以降、ルネサンスが興ると、イスラム圏から占星術の知識・手法が逆輸入されることになるのです。
それはそれで、キリスト教からすれば、イスラム圏の占星術はイスラム教の匂いがしてですね、異端としてより迫害の対象になっていくわけですよ。

まぁ、つまり、この漫画の舞台はちょうどその中世ヨーロッパでの話で・・・そもそも中世では、西洋占星術と天文学は1つになっていたわけですからね。星の動きを観測していたのは・・・その必要があったのは、占星術師くらいであって、まぁ、つまり天文学者でもあったわけですよ。
ですからね、占星術師も、おそらく同じようにキリスト教からひどい目に遭っていたのだろうと想像がつくわけですよ。13世紀にダンテが描いた「神曲」では、占星術師は魔術師として扱われ、地獄に墜ちています。

西洋占星術のほとんどのホロスコ―プは、天動説で表記されています。
チャート上では太陽も、星の1つとして、ぐるぐる動いていますからね。
でも、惑星の逆行などを正確に描こうとすれば、当然、地動説の視点で計算しているのであります。

ちなみに西洋占星術がなんとなくキリスト教から黙認され、許されるようになったのは、おそらく17世紀ごろでしょう。1647年には、ウィリアム・リリー著「クリスチャン・アストロジー」が出版されます。日本語に訳せば、“キリスト教の占星術”もしくは“キリスト教徒のための占星術”という題名であります。

その頃に出版されて、広く支持されているということは、ガリレオの宗教裁判が1633年ですから、地動説よりは占星術の方が早く認められたのでしょうね。

この「クリスチャン・アストロジー」は10年くらい前に、日本でも出版されています。田中要一郎さん監訳、田中紀久子さん訳であります。私も最初に出た第3書だけ持っていますけどね。これから星占いの勉強をしようとする人には、特にお薦めはしません。中世にはこういった形で西洋占星術はあったのだなと、歴史的な部分への関心がある人は読んでみるのも良いでしょう。西洋占星術の歴史において、重要な意味のある本です。でも、この本を読んだからといって、理解するのに費やした労力に比べて、鑑定技術が上がるとは思えないです。腕を上げたかったら、他の占星術の本を読んだ方がよいでしょう。
まぁ、例えて言うなら、現代の医学部生が杉田玄白の「解体新書」を読むようなものです。この本を読んで、訳わからんとなっても、さほど影響はありません。

で、原本は17世紀に「クリスチャン・アストロジー」という題名で出版されているのですが・・・
ただウィリアム・リリーのいたイギリスは、キリスト教の中でもイギリス国教会と言う宗派で、他とは違って、占星術に対して寛容だったのでしょう。

そもそも“キリスト教の占星術”もしくは“キリスト教徒のための占星術”なんて題名で出版されると、教会のお偉いさんたちが内容をよく理解できなかったら、なんかイスラムから来たそれまでの占星術とは全然違って、新しく、キリスト教オリジナルな優れたものが出てきたような気がしますもんね。
占星術の知識があまり無い人からすると、この本は相当に難解ですよ。キリスト教の教えに沿っているかどうか、検閲しても、可否の判断できなかったことでしょう。そうなると、この題名でごまかされた感があるかもですね。

まぁ、話は戻りますが、17世紀あたりからまた西洋占星術はちゃんと隠れることなく、ヨーロッパで堂々行えるようになったということですよ。

中世ヨーロッパの占星術に魅了されて勉強した人たちは、地動説が真理だと研究し続けた人たちと同じように、火あぶりになるリスクを負いつつ、追い続けたわけですよ。

そんな視点でこのアニメを観てもらいたいですね。

ただ、小難しく、ラブロマンスも無く、派手なアクションシーンも無く・・・脚本、演出、作品の出来によっては、相当に眠くなる作品になるかも・・・。



話は変わりますが、
この番組改編期に関することで悲報としまして、東海地域ではフジテレビ系「突然ですが、占っていいですか?」が放送されなくなるのです。
はぁ~、毎週TVerで観るしかないのか・・・。

イラストは生成AIによるものです。