ひとり好き同士


鹿児島県内の老人施設に勤める看護師のT子さん。
次から次へと降ってくる仕事をこなしてきて、ふと気づくともうアラフォーになっていた。少し前までは実家に帰ると、親や親戚との話は結婚の方に向かっていたけれど、最近は親たちも気遣うのか、そんな話も出なくなった。T子さん自身、一人の生活が充実していて、結婚は後回してきたところがある。
さすがに夏の間は、外に出る気にはなれなかったけれど、いつも休憩時間には、施設内のベンチに座って、ポットに入れて持ってきたコーヒーを飲む。南からの海風が心地良い。

収入面でも男性に頼る必要も無いので、無理に結婚してもね、どうせ別れるだけだから。看護師の同僚や先輩の中にも、結局離婚して一人で頑張っている人も多いし・・・そもそもこの職場では出会いも無いし。
と思っていたけれど、気になる 男性Nさんが出てきてしまった。

10年くらい前、T子さんは別の病院で働いていたのだが、その頃に長く入院されていた人だ。トレードマークはよく手入れされたあごひげで、地元のスーパーの副社長だ。お父さんが社長で、その息子ということだが、副社長といっても小さなスーパーなので、トラックが来れば、積み荷を降ろし、朝から野菜の陳列に汗を流し、「今日は○○が安いよ~」と声を張り上げている。10年前もカッコいい人だな、とは思っていたけれど、その気持ちだけで特に何も起こらなかった。それが最近、ばったり再会した。
6月ごろ、コロナの感染も緩んで、仕事も少し楽になり、飲食店にも行きやすくなった。少し肩の荷を楽にしたくて、久しぶりに入った駅近くのカフェバーだった。

お店で久しぶりに話し、それがきっかけで毎日のように会ったり、電話やチャットをするようになった。旅行にも行くような関係になったのだが・・・Nさんは、彼女を作らない宣言をしている。

「俺は誰とも付き合わない。彼女は要らない。俺は止めておいた方がいい。」

これまで多くの女を泣かせてきたからだ、と言う。

T子さんは、こんな形で付き合う形は断たれているのだが・・・


“ですが、なんだかんだ会う口実を作って会いに来ていますし、デートの後もなかなか帰してくれなかったり、電話も切らなかったり、と(もっと一緒にいたい)という気持ちがビンビン伝わって来ます。”

なのだそうだ。

という流れがあって、私に鑑定依頼が来たわけですよ。
星を診ると、なるほど、面白い関係だなと分かるのですが・・・まずはT子さんと、Nさんそれぞれのホロスコープからお話しましょう。
本人が特定されることを防ぐため、生年月日は記載しません。

【ここでホロスコープ初心者の方のためにアスペクト(角度)のことを簡単に伝えると、星同士の角度が0、60、120度の時は“吉角”と言って、良い働きをする角度。90、180度、つまり直角か、真裏に星が来ると、“凶角”と言って、強く出過ぎて、害になりやすい影響を与えやすい角度。詳しくは私のサイトを見てね。】

ホロスコープからはもっと多くの情報が読めるのですが、ブログが長くなるので、ここでは注目したい点だけ話させてもらいますね。金星♀と木星♃が180度凶角を形成していることです。これを私は“疎遠星”と呼んでいますが、“一人好き”の星並びとなります。
独りでいるのが平気とか、逆に一人の時間がないと堪えられないとか、といった性格が出てきます。

一方、Nさんの星並びを見てみると、

やはり同じく、金星♀と木星♃の180度凶角のアスペクトがあるのですよ。彼も“一人好き”なんですよね。

この星並びを持つと、一人好きになりますので、結婚の優先度が低くなります。そのため、多くのことを犠牲にしたり、我慢してまで結婚をしたいなんて考えません。結果、結婚が遅くなったり、独身を貫いてしまう傾向が出やすくなります。

で、この“一人好き”というものなんですが、一人がいる時がウキウキとテンション高く幸せかというとそうでもなく、 “ぼっち感”を持ってしまうということなのですよ。ちょっとこのニュアンスの説明が難しいのですが・・・。

ひとり好きだから、淋しがり屋ではないだろうと思うかもしれませんが、そうでもない。

一人好き、一人平気だから、一人旅なんかもできてしまう。で、一人で好きなところを回って、一人温泉にゆったりと入ってくつろいだりもするのですが、例えば、ホテルの朝食、夕食がバイキングの場合、他のカップル客や家族客がわいわいやっていると、やっぱり“淋しい”と感じたりする。
でも、友人たちと旅行すると、それはそれで楽しいだけれど、気疲れしてしまって、やっぱり一人の方がいいなぁ、となる。で、やっぱり一人での行動に向かうようになってしまう。
一人好きと言っても、最初から一人が好きなのではなく、人に気を使い過ぎたり、人に合わせるのに神経をすり減らす傾向が強くて・・・なら、一人の方が楽だとなるわけだけれど、そこはやっぱり淋しかったりもする。何というか、“ぼっち感”を持ったままの、“一人好き”なのですよ。

で、他にこの金星♀と木星♃の凶角の特徴として、“家族っぽくない”というのがあります。
家族そろって、べたべたして何かをやるということに対して、冷めています。

金星♀と木星♃の吉角は、“家族星”とも呼んでいますが、何でも家族一緒という感覚があったりします。ご飯は家族そろって食べるものだ、とか。初詣は家族そろって行くものだ、とか。紅白歌合戦は家族で見るものだ、とか。

逆に、金星♀と木星♃の凶角ですと、家族に対する考え方が真逆になり、家族がべたべたすることを嫌います。イオンモールへ家族と一緒に出かけても一人だけ別行動を望み、「駐車場に5時ね。」と言って、さっさとどこか行ってしまったりします。

ホロスコープを見ると、T子さんも、Nさんも“一人好き”同士ということが、分かるのですよね。2人とも、仕事を優先してきて、それほど家族、結婚に関心が無かったというか。

で、NさんはT子さんに向かって、“俺は今まで多くの女を泣かせてきたから、彼女は作らない”というようなことを言いながらも、なんだかんだベタベタしてくるというのなのですが・・・

この点を探るため、2人の相性を診てみましょう。
T子さんとNさんの2人のホロスコープを重ね合わせて、2重円を作ることで相性を読み取ることが出来ます。
内円がT子さんで、外円がNさんとなります。

面白いことに、金星♀と木星♃の120度吉角“家族星”が2つもできるのです。黄色とピンク色のラインがそれぞれ120度を示してします。

金星♀と木星♃の180度凶角を持つ2人のホロスコープを重ね合わせると、金星♀と木星♃の120度吉角が2つもできるというのは、何ともレアなパターンであります。

で、相性で“家族星”ができてしまうと、家族っぽくなります。

金星♀と木星♃の吉角アスペクトは、本によっては、最高の愛情星なんて書かれたりします。私は、まぁ、確かにそうだとは思いますが、家族っぽくなるので、男女の場合、“妹みたい、お兄さんみたい”というようなまったりとした関係になってしまう。だから、必ずしも恋愛スイッチが入るとも限らない星並びですが、一旦、恋愛に発展した場合、心温かく、長く関係が続くみたいなのですよ。

で、T子さんとNさんの場合、そもそも2人は“一人好き”同士の“ぼっち感”を持った者同士なのですが、お付き合いを始めると、この2人の関係は“家族星”になるということです。
T子さんも今までは、ずっと独身でもいいかなと思っていたようですが、Nさんとなら、一緒に暮らすとか、結婚とかもアリかなという気持ちになれたそうで。

で、Nさん、「俺は誰とも付き合わない。彼女は要らない。俺は止めておいた方がいい。」と言いながらも、T子さんと一緒にいると、

“なんだかんだ会う口実を作って会いに来ていますし、デートの後もなかなか帰してくれなかったり、電話も切らなかったり、と(もっと一緒にいたい)という気持ちがビンビン伝わって来ます。”

となるわけなのですよ。

Nさん、“今まで多くの女を泣かせてきた”と言っているようですが、どうでしょうね。

本人のホロスコープで凶角が多いと、ガツガツしていて、いわゆる“くせ者”になってしまいます。好戦的で、危険な匂いがするような人物になったりします。

ですが・・・Nさんのホロスコープを見ると、一人好きの180度凶角以外、ほぼ凶角が無いのですよ。

あんまり危険な匂いが無いというかですね。むしろ、“いい人”なんじゃないですかね。口では、ニヒルな男のようなことを言ったりしていますが、ただの“一人好き”のように見えますね。

T子さんは、「私も彼が好きですし、ずっと一緒にいたいと思っています」ですって。

で、いつもなら、星占いとして、いつ頃プッシュすればいいかというアドバイスをあげたりするのだけれど・・・毎日のように、会ったり、電話で話しているし、泊まりで旅行にも行ってるし、Nさんは友人たちにT子さんのことを紹介しているし・・・この段階では、これ以上接近するタイミングなんて必要なんじゃないかと思えるわけですよ。

ホロスコープを見ればね、Nさんはなぜ“一人好き”なのに、T子さんは一緒いるとべたべたしてしまうのか分かるのだけれど・・・Nさん自身は、そうは分からないから、今、自己矛盾に陥っているんじゃないですかね。

例えて言うなら・・・
冷やし中華にマヨネーズっておかしいでしょ。でも、かけてみたら、美味しいんだよね。いやいや、やっぱり冷やし中華とマヨネーズは世界観が違うし、ここを合わせたら、麺類なのか、サラダなのか分からなくなるでしょ・・・と考えがぐるぐる回っている感じかな。

まぁ、ゆっくりNさんの自己矛盾が溶けるまで、毎日会って、電話で話して、待つしかないかな。

そして、ついには、ぶつかり合うNさんの“一人好き”の星と、相性の“家族星”のどちらが勝ってしまうのか。

そこは私にも分からない。なにせ、かなりのレアケースですので。