和気あいあいしない家族


帰宅したら、とりあえず「ただいま~」と言ってみる。
誰もいないのは分かっている。
沈黙した空気に 発した言葉は吸い込まれていく。
K子さんには家族はいるけれど、一人で暮らしている。

千葉県にお住まいのK子さんは、今、50代半ば。
夫は中堅のメーカーに勤めているが、県外の社宅で単身赴任中。息子2人は、家を出て、独立している。長男は昨年結婚した。もう家に戻ることはないだろう。

K子さんは保険の代理店で仕事をしていて、人に会って、よく話をしているので淋しさもまぎれている。K子さんはASC(アセンダント)上に土星もあるせいか、真面目そう、堅実そうな印象を与えている。よく人に信用される。だから、保険契約の獲得にはあまり苦労しない。

でもね、プライベートはぽつり一人なんです。

結婚してからは、ずっと“団らん”というものが無い生活だった、と思う。息子たちが幼かった頃も、夫は休日にはゴルフや釣りに出かけているし、息子たちは部屋にこもってばかりだし、家族バラバラ。

離婚も考えていたけれど、不倫とか、生活費を入れないとか、DVとか、そういった決定的な理由が無く、ただ“淋しい”だけではね・・・いやいや、離婚したら、もっと淋しいだけでしょと周囲や家裁から言われかねない。

そんな家族のことで欝々としているK子さんから昨年、最初の鑑定依頼があったのですよ。

で、まずはK子さんのホロスコ―プ(ネイタルチャート)を見てみましょう。
本人が特定されないように生年月日は隠しております。

【ここでホロスコープ初心者の方のためにアスペクト(角度)のことを簡単に伝えると、星同士の角度が0、60、120度の時は“吉角”と言って、良い働きをする角度。90、180度、つまり直角か、真裏に星が来ると、“凶角”と言って、強く出過ぎて、害になりやすい影響を与えやすい角度。詳しくは私のサイトを見てね。】


K子さんには、金星♀と木星♃の60度吉角があります。
私は金星♀と木星♃の吉角を“家族星”とも呼んでいますが、家族の温かみを求める傾向が出てきます。この星並びを持っている人は、家族は一緒にご飯を食べるものだとか、家族は一緒に初詣に出かけるものだとか、大みそかには家族は一緒に紅白歌合戦を見るものだといった感覚を持っていたりします。まぁ、何でも“家族、家族”になりやすいと言いますか、家族がベタベタした感じになります。

実際、K子さんは、賑やかな家庭環境で育ったようです。
父、母、姉、弟の5人家族。日曜日には、父の運転する車でキャンプや川遊び、遊園地、海水浴とお出かけした。お正月は次々とゲーム盤を開いて、家族5人がいつまでも止まらなかった。お盆は毎年、新幹線に乗って、父の実家の和歌山に行った。誕生日は、みんなでケーキを作って、はしゃいでいた。

セピア色になった子供の頃の思い出が懐かしく、感傷にひたってしまうそうです。

そんな光景が当たり前の家庭だと思っていたのですが、結婚して、そのイメージは一変し、幻想のように消えていったという。

まぁ、仕方ないのですよ。というのもですね・・・夫、長男、次男のネイタルチャートを続けてご覧頂きましょう・・・。

と、ちょっとその前に、少し金星♀と木星♃の星並び(アスペクト)の話をしますと、金星♀と木星♃の吉角(60度、120度)を私は“家族星”と呼んで、家族の温かみを求める傾向が出てくると説明しましたが、
これがですね、金星♀と木星♃の凶角(90度、180度)を持つと、私は“疎遠星”と呼んでいますが、まったく逆で、一人好きになってしまいます。

皆さん、何となく、予想しているもしれませんが・・・もうね、夫、長男、次男とも“疎遠星”を持っているのですよ。金星♀と木星♃が90度か、180度ね。


夫には、金星♀と木星♃の90度凶角があります。
長男には、金星♀と木星♃の180度凶角があります。
次男には、金星と♀木星♃の90度凶角があります。

上にも書きましたが、金星♀と木星♃の凶角を私は“疎遠星”と呼んでいますが、一人好き、一人平気で、家族でベタベタしないタイプなのですよ。この星並びを持つと、金星♀と木星♃の吉角“家族星”のような“家族はいつも一緒にいるものだ”という感覚はなく、その逆で別々なのが自然体だったりします。例えば、イオンモールに行っても、駐車場を降りる時、“夕方5時にここでみんな集合ね”となり、個々にショッピングを楽しむことが当たり前といった感じなります。実際に鑑定していても、この星並びを持つ人は、家族旅行に行っても、現地集合、現地解散のようなことをするとよく聞きます。そもそも旅行先が違うことさえあります。

だからですね、家族の団らんというものに関する考え方が、K子さんと男3人はまったく違っているのですよ。

夫に関しては、K子さん曰く、結婚前は、

“子供が好き。野球が好きと言っていたので詐欺にあったみたいです。子どもとキャッチボールや自転車教えたり、を夫はしたことないです。”(メ―ルの原文のまま)

他の性格の部分で言えば、ラインなどでは示していませんが、長男、次男は、月☽と土星♄が重なっていて、真面目ですよ。
夫は土星♄、天王星♅、冥王星♇が180度凶角で、ハードワーカーの変わり者。月☽と火星♂が180度凶角で、怒りっぽいところもあるかな。夫はちょっと面倒な人かな。

そして、それぞれ相性を診ていますと、またこれがですね・・・。 まずは夫とK子さんです。
相性は2つのホロスコ―プを重ねて、アスペクト(星同士の角度)を見ていきます。
内側が夫で、外側がK子さんです。


夫の金星♀、木星♃と、K子さんの太陽☉で、Tスクエアを形成しています。Tスクエアとは、180度凶角と90凶角の組み合わさった強い凶角であります。これは、“疎遠星”のTスクエアであります。疎遠星がパワーアップされています

相性で疎遠星ができますと、物理的に遠距離になったり、忙しくてなかなか会えないとか、生活や仕事の時間が違っていてすれ違いになるなどの現象が起こってきます。例えば、職場のパート仲間同士でこれができると、シフトが合わないなんてこともあります。

実際、結婚前のお付き合いをしている時も、遠距離恋愛だったそうです。まぁ、その頃は、JR東海の「シンデレラ・エクスプレス」とか「クリスマス・エクスプレス」のCMが流行っていて、山下達郎さんの曲がかかっていて、それはそれでロマンチックだったことでしょうが。

K子さんも夫も生まれは関西で、大阪の大学で知り合ったのだけれど、夫は就職したら、すぐに東京に行き、離れ離れになっていて・・・以来30年間、それとなく遠い夫婦生活がずっと続いているという。

ちなみにこの“疎遠星”というのは、けっして“嫌い”という訳ではありませんよ。単純に、物理的、時間的に距離が開きやすいということであります。

そしてね、K子さんは次男とも相性で疎遠星ができているのですよ。


次男は金星♀と木星♃の90度凶角を持っているのですが、その上にK子さんの金星♀が乗っているのですよね。つまり金星♀、金星♀、木星♃の90度凶角ができているのです(青色のライン)。疎遠星がパワーアップされているのですよね。

次男は、都内の大学に入ると、ちょっと遠いけれど、通えなくもないのに、一人暮らしを始めたそうです。もともと一人好きの性格でありますからね。干渉されたくなかったのでしょう。

弟が都内で一人暮らしを始めれば、そのマンションに兄も入り浸っていきそうなものですが・・・K子さんの家の男どもは、皆、一人好きですから、そういった群れるようなことはしなかったそうです。昔から。

一方、実は、次男とは、金星♀、金星♀、木星♃の120度吉角もできるのです(黄色のライン)。これは“家族星”であります。

つまり、次男とは金星と木星の凶角“疎遠星”と、金星と木星の吉角“家族星”の両方ができているのです。

こういった相反する星並びができる場合、相殺するのではなく、その両方が場面などを違う形で出てきます。
次男は家を出ていますが、家族の温かい結びつきとして多少期待できるのは、次男ですかね、とお伝えしましたけれどね。

そんなわけで、次男が家を出てから、長男が昨年結婚するまでは数年間、K子さんは長男との2人での生活が続いたのです。で、長男とは相性で疎遠星はないのですが・・・


長男の水星☿とK子さんの木星♃が180度凶角になっています。
水星☿と木星♃の凶角は、“話が噛み合わない”のコミュニケーションミスが起こりやすくなります。会話が無いわけではないですよ。むしろ、多過ぎて、混乱して、“要は何が言いたいの”とか、“大事な情報に限って伝わっていない”ということになります。

K子さんは、長男とはそれなりに楽しく会話をしていたようですが、彼女ができたとか、そういう大切な話は一切無かったそうです。
かつ、結婚してからは、あんまり連絡を取ってないそうです。なんかね、K子さんが連絡すると、うっとうしがられるそうです。

夫、長男、次男は、K子さんと真逆で、一人好き。そして、相性的にも、遠距離になったり、話が噛み合わなかったり・・・K子さんのイメージするような家族団らんを期待するのは無理なのかなと。

そうホロスコープを解説しながら、お伝えしたら、すっきりされたということでした。自分が望むようには解決できないけれど、そういうものなんだなと受け止めることができたということらしいです。

数か月経って、また最近、鑑定させてもらったのですが・・・

K子さんは昨年、250ccのバイクを買いました。

大学生の頃、弟と一緒に中型2輪の免許を取っていて、バイクに関しては、ずっとペーパーだったけど、友人が貸してくれるというので、恐る恐る乗ってみたら、爽快で、これが楽しくって。それで、購入を決めたという。ホンダの新しいモデルらしいです。

今は、愛車のバイクに夢中で、晴れた休みの日にはいつも出かけているという。
革のツーリングウェアを着て、海岸線を走っていると、“私、峰不二子みたいやん。”と思っているそうだ。
少しずつバイクの関係の友達も増えてきているという。

で、そんな中、長男が結婚して家を出ていって居やすくなったのか、次男が今月、家に戻ってくることになった。一人暮らしを辞めて、親元に帰ることで貯金を増やしたいのだという。

上に、次男とは“家族星”もできていると書きましたが、今になって上手く発動してくれたみたいです。

“わたし的には"ぼっち"から解放されるので、イェーイ!です。”

でも、K子さんは、50代半ばになり、家族に心を満たすものを期待したり、求めるのはもう止めると決めているようです。

“このメンバーではこれからも私は満たされることがない。けれど、このまま人生が終わってはつまらないので、とりあえず「旦那さんに合わせる」事はきっぱりやめることにしました。(いつのまにか私もひとり好きかと勘違いしていました。)人を家にお招きもするし、旅行もする。
家族以外で和気あいあいできる老後目指して、やってみたいと思っています。”

K子さんは250ccのバイクをまたぎ、爽快に太平洋の海岸線を走る抜けていく。
いつか次男か、孫が後部座席に乗りたいと言ったら・・・乗っけてやっても、いいぜ。



イラストは生成AIによるものです。