父が一人で暮らすと言い出した。

もし自分の両親が60代半ばになって、いきなり「別々に暮らす」と言い出して来たら、
そりゃ、一家の一大事、大事件わけですよ。

千葉県にお住まいのHさんは、そんな両親を心配して鑑定の依頼をされてきた。
父親は小さな貿易会社を営んでいて、自営業者だから特に定年は無いのだけれど、来年65歳になったら、会社を畳んで一人海辺に引っ越すと言い出した。

もともと釣りが大好きで、月に数回は釣りに行く。
どうせ一度っきりの人生だから、最後ぐらいは好きなことをやり尽くしたいという。
父親は苦労人で、生まれも5人兄弟の末っ子で、下着のパンツもずっと兄のお古を履いてきたんですって。
本人曰く、自分は幼い頃からずっと我慢ばかりして、人の為に尽くしてきて、家族にも尽くしてきたから、そろそろ好きな事を存分にやらせろ、という主張なのですが・・・。

まぁ、この世代の男性にありがちな、自分の勝手な態度というやつじゃないですかね。

で、さっそく、房総半島の東側、太平洋側、いわゆる外房ですね、とか、茨城県とかで、物件探しにウキウキと動き出しているようなんですよ。
空も空気もきれいでしょうから、不動産屋さんと回っているだけでも気分いいことでしょう。釣り三昧の生活を想像してね。車の中で膝をリズミカルに叩いているのが目に浮かぶようですよ。

依頼者のHさんは娘さんに当たるわけですが、じゃ、母の方はどうかというと、それほど困惑している様子がなく、“どうぞ行ってらっしゃい”という具合。
そうなると、Hさんは両手を頬に当て、“もしかして熟年離婚”と叫んで、頭が一瞬真っ白になったそうなんですが・・・。

まぁ、確かにね、ご両親の相性を星で診ると、どうしても離れて暮らしてしまうのかなぁ、という感じはするのですが、離婚までするかどうかは・・・どうなんでしょうね。

では、このHさんのご両親の星を紹介しましょう。
相性を診る時は、2人のホロスコープを重ねた2重円で鑑定していきます。
内側が母親で、外側が父親であります。

本人が特定されることを防ぐため、生年月日は記載しません。
【ここでホロスコープ初心者の方のためにアスペクト(角度)のことを簡単に伝えると、星同士の角度が0、60、120度の時は“吉角”と言って、良い働きをする角度。90、180度、つまり直角か、真裏に星が来ると、“凶角”と言って、強く出過ぎて、害になりやすい影響を与えやすい角度。詳しくは私のサイトを見てね。】


注目したいのは、母親の金星♀、木星♃、海王星♆と父親の太陽☉、金星♀、木星♃が一直線上に並んで、強い180度凶角を形成しています。(水色のライン)

金星♀と木星♃の凶角は、私は“疎遠星”と呼んでいます。カップルでしたら、遠距離恋愛になりやすい星並びです。もしくは忙しくてなかなか顔を合わせられない関係となりやすいです。嫌いという訳ではなく、物理的に距離が開きやすいのですよ。

また木星♃と海王星♆の凶角も、“疎遠星”と呼んでいまして、やっぱり遠距離になりやすいのです。
金星♀と木星♃の凶角、木星♃と海王星♆の凶角の2つのアスペクトだけを私は“疎遠星”と呼んでいるのですが、Hさんのご両親は、この2つが180度凶角上で重なっているのですよ。

強さは星の数に比例しますが、実に6つですものね。かなりレアで強烈な“疎遠星”なわけですよ。
まぁ、何ていうか、遠距離なのが、自然な姿の夫婦となっているわけですね。

実際、父親は若い頃、海外にずっと単身赴任していて・・・貿易会社を開業する前は、大手の商社で働いていたそうです・・・Hさんと弟と母親の3人は日本に残って暮らしてきたんですって。

じゃ、この夫婦は、遠距離生活が普通ですし、愛情は無かったか・・・というと、そうでもない。
この点に関しては2つの星並びを解説しますが、
まずその1つ。
今度は、内側の母親のMC(ホロスコープ上の天辺)の位置を出してみました。

母親のMC(ホロスコープ上の天辺)に父親の太陽☉、金星♀、木星♃があります。

・自分のMC上に木星♃がある相手は、財運、仕事運を与えてくれる相手か、世界を広げてくれる相手です。
・自分のMC上に金星♀がある相手は、愛情を降り注いでくれる相手か、趣味、アートの世界へ導いてくれる相手です。
・自分のMCに太陽☉がある相手は、自分を引っ張っていってくれる相手です。ただし、相手の方が主従関係の主になってしまう可能性もありますが。

というわけで、母親にとって、父親は幸福感を与えてくれる人なのですよ。そもそも3つの星は全部、吉星、ラッキースターですからね。それが全部、自分の頭上になるイメージですよね。

自分のMCに太陽☉、金星♀、木星♃があるラッキーパーソンとよく出会えて、よく結婚できましたね、と言いたいくらい運のいいレアケースな星並びですよ。

で、もう一つはですね。下のチャートの黄色のラインですが


母親の金星♀、土星♄、海王星♆と、父親の太陽☉、金星♀、火星♂という6つの星がTスクエアを形成しています。Tスクエアとは90度凶角と180度凶角が組み合わさった強い凶角アスペクトであります。

まぁ、よく私がこのブログで恋愛話の時には紹介しているので、またかと思われるかもしれませんが・・・
金星♀と火星♂のアスペクトは、記号のとおり、オスとメスのマークで男女の本能的な関係を示しているので、私は“エロ星”と呼んでいます。

金星♀と海王星♆の凶角は、“色気星”と呼んでいて、大人の“ダンディー”とか“色っぽい”というような印象を受ける関係になります。

で、“エロ星”と“色気星”が組み合わっているので、これだけでも惹きつけ合う力がかなり強いわけですよ。そこへ、さらに土星♄の凶角90度があってですね。
金星♀と土星♄の凶角を、私は“快楽ざる星”と呼んでいます。好きな事、快楽に関してはブレーキが効かなくなって、欲求が止めにくくなる星並びです。

つまり、このTスクエアは、“エロ色気の快楽ざる星”となります。

ちなみに、私の鑑定時での聞き取り調査によりますと、カップルで“快楽ざる星”ができると、夜の営みも“ざる”になって、激しくなる傾向があるようです。

で、この夫婦にできているのは6つの星での“エロ色気の快楽ざる星”のTスクエアですから、出会ったばかりの若かりし頃はかなりの大恋愛だったのではないですかね。

ちなみにエロ星の場合、星が多く、凶角ほど強く引き付け合います。
吉角をソフトアスペクト、凶角をハードアスペクトとも言いますが、まぁ、恋愛とか、夜の営みに関しては、ソフトとハードでどちらがいいかは好みの問題ですからね。

そんなわけで、遠距離になりやすいお二人ですが、なかなか素敵なカップルだと言えるのではないですかね。
遠距離になってしまうことは、淋しいのですけど・・・

おそらく、結婚して、まだお子さんが子供の頃は海外に単身赴任して、旦那さんが独立開業してからも、あちこち飛び回って、忙しくて顔を合わせられなくて、やっと落ち着いてきたと思ったら、今度は一人で釣り三昧の生活をしたいと言い出したということかしら。

まぁ、こんな流れがこの夫婦には起こっているのでしょうが、決して、仲が悪いわけではないのですよ。むしろ他の夫婦より幸せ感が強いんじゃないですかね。

他にも、特にチャートには示していませんが、父親の木星♃と母親の海王星♆が重なっていて、私はこれを“バブル星”と呼んでしますが、陽気になったり、ポジティブ感があったり、高い評価を受けたりします。

そんな星並びもありますから、おそらくこの夫婦には、今回のようなことが起こっても前向きでいられて、悲壮感とか暗い空気なんて無いのではないですかね。

“でも、お母さんは独りぼっちで淋しいんじゃないですか?”

なんて質問も出てくることでしょう。
まぁ、娘さんのHさんは分かっているでしょうが・・・
で、この母親、父親の性格をちょっと覗いて見てみましょう。
家族に対する考え方は対照的なのですよ。
ここは一つ、二重円のまま、解説しますね。


確認しますが、内側が母親で、外側が父親です。

母親には、金星♀、木星♃、海王星♆の180度凶角があります。(水色のライン)
実はこれは上で解説しました、金星♀と木星♃の凶角と、木星♃と海王星♆の凶角という、“疎遠星”のアスペクトが2つ重なったアスペクトなのです。結構強い“疎遠星”アスペクトですね。

相性ではなく、個人でこの疎遠星を持つと“一人好き”、“一人が平気”になります。
つまり母親はかなりの一人好きと言えるのです。

ただ一人好きというのは、決して一人の時の方がテンション高くなって、ウキウキとするというわけではなく、他人と一緒に居るより一人の方が楽なので、結局一人を選んでしまうというような感じです。
まぁ、詳しくは、以前の「ひとり好き同士」というブログで書いておりますので、興味がある人はそちらも読んで下さいませ。

母親が父親に対して、“一人で行きたいなら、どうぞ。いってらっしゃ~~い。”と軽く手を振るのもそんなに理解に難くないです。

一方、父親の方(外側の円)では、太陽☉、金星♀、木星♃が重なっております。(赤色の丸)
金星♀と木星♃が0度で重なると、吉角の働きになり、凶角とは逆の性質になります。

私は、金星♀と木星♃の吉角を“家族星”と呼んでいます。
こちらのアスペクトは、家族で一緒に居たがります。このアスペクトを持つ人達は、“ご飯は家族で一緒に食べるものだ”とか、“初詣は家族で一緒に行くものだ”といったルールが頭の中でできていたりします。
またそれを太陽☉がパワーアップしていると考えてください。

貧乏育ちの5人兄弟の末っ子で苦労したというけれど、家族はいつも一緒に賑やかな食卓を囲んでいたんじゃないですかね。

娘さんのHさんからよくよく話を聞くと、父親は海辺に家を見つけて、釣り三昧の毎日を送るということですが、生活が安定してきたら、奥さんを呼び寄せることを考えているらしいのです。
そこのところは、やっぱり“家族星”を持っている人らしい感性というか。

でもね、この夫婦は上に話したように稀に見る強い疎遠星がありますのでね、おそらく、遠距離なのがこの夫婦の“自然な姿”なのですよ。
しかも、母親の方も、実はかなり一人平気というか、一人の時間と空間が欲しいタイプのようですしね。

お母さんは、広くなったおうちで、優雅にお茶タイムなんかを楽しみながら、ドラマでも眺めて過ごすのではないですかね。なんやかんや、一人が気楽でいいわ、なんて言いながら。

一方、お父さんは、千葉か茨城の海辺に一人、釣りと畑を楽しむ生活ということですが。
釣り糸を垂らしながら、遠く青い水平線と青空に、家族のことを想い・・・

なんで俺は結婚してから、こんな風に一人ぼっちでいることが多いのだろう、
と、ふと人生を振り返ったりして・・・。

まぁ、自分が言い出したことですからね。

まぁ、夫婦の相性にある、強い“疎遠星”のせいですよ、と、特に教える必要は無いですけどね。

ということで、Hさんや周囲の人は、熟年離婚を心配しているようですが・・・おそらく、それはないでしょう。
こんな形でも、この父母は、稀に見るラブラブカップルなのですよ。